手取り25万でも専門学校に行けない日本(もしNHK貧困女子高生と似たような世帯が生活保護を受けたら)
この記事の目的
・最近ネットで話題になっているNHK貧困女子高生。いろいろな思想的な意見は読んだけど、具体的な金額から貧困について考えてみたくて調べた。
注意点
・NHKでは女子高生の世帯が生活保護を受給していたかどうか触れていない。なので、あくまで似たような世帯構成の家庭が生活保護を受けていたらどのくらいの収入があるのかという仮定の話。この女子高生の家が生活保護を受けていてこれだけの収入があるはずだと言うものでは決してない。むしろ、似たような世帯がほかにもいるであろう日本の現状を知りたくて計算したに過ぎない。
・生活保護費の計算には年齢区分もある。娘の年齢は不明だが、進学を話題にしていたので18才とする。母親の年齢も不明なので、ざっくり50才と仮定(参考 出生順位・都道府県(21大都市再掲)別にみた父・母の平均年齢 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001137964)。
1 生活保護費 月216,740円
横浜市 1級地1(同じく1級地1の東京都北区のを参考http://www.city.kita.tokyo.jp/seikatsufukushi/kenko/fukushi/hogo/documents/seikatsuhogokijunngakuhyou.pdf)
2人世帯の母子世帯 母50才 娘18才
・生活費 月119,680円
・母子加算 月22,790円
・高校就学費 月12,270円(高校に行っている子には他に通学費や教材費が全額実費で支給される。)
(高校授業料は高等学校等就学支援金で無料のはず。http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f328/p4425.html)
合計支給額 月216,740円
よって似たような世帯が生活保護を受けていたら最低で毎月216,740円の収入が保証されることになる。
2 収入
・児童扶養手当 月42,330円(http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/katei/kosodate/jidoufuyouteate.html#teategaku)
3 月の手取り 246,340円
上記2の収入があった場合支給される生活保護費
=44,010
月に手取りで246,340円の収入があることになる。
上記のとおり保険料、年金、住民税は免除、医療費もかからないので、自由に使える額がこれだけと言える。
4 年の手取り 3,014,000円
生活保護費からは冬季加算3,360円(10月から4月まで7ヶ月間)と期末一時扶助22,650円(世間で言うボーナス)が支給されるので、年で考えるともう少し額が増える。また高校生等奨学給付金が年額32,300円支給されるが、これは生活保護費から差し引かれない。(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f531013/)
・5月から9月までの5ヶ月
上記のとおり月246,340円×5(ヶ月)=1,231,700円
・10月から4月までの7ヶ月
(月246,340円+3,660円(冬季加算))×7(ヶ月)+22,650円(期末一時扶助)+32,300円(奨学給付金)
=1,782,300円
よって、年の手取り額は3,014,000円である。
この額で子どもを専門学校に行かせられるのかどうかわからないので、ほかの人の意見を聞いてみたい。
5 高校生のアルバイト
高校生のアルバイト代は基礎控除額が最低でも15,000円、あと未成年控除が11,400円適用されるため、月26,400円までは(ちゃんと収入申告していれば)生活保護費から差し引かれることはない。さらに、26400円を超えたアルバイト収入があっても、専門学校へ行くために貯金したいと申告すれば入学に必要な金額は生活保護費から引かれることなく貯金することができる。高校生が50万円ものお金を貯めるのは並大抵のことではないし、専門学校を目指し始める学年によっては間に合わないかもしれないが、制度としては可能性が閉ざされているわけではないとは思う。ちなみに、貧困層は目先のことにお金を使ってしまう云々の話をネットでも見かけたが、支給された生活保護費や児童扶養手当の使途を強制や制限する制度には当然なっていない。
6 その他
委員名簿
今回の件についてなにか語ろうとするなら委員の阿部彩先生の本を読まないとはじまらない。
『子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)』
貧困について感情論ではなくて客観的に考えたいという人がいるなら、もう1人の委員である小塩隆士先生の本をどれでもいいから読むと勉強になる。
『社会保障の経済学 第4版』
貧困について世界ではどのように工夫した取り組みが行われているのかの一端を知るのにうってつけなのはこれ。
『貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える』